神戸山口組々長・井上邦雄の人柄を元山口組三次団体組員が証言してくれた。
もう十年はなるかなぁ。井上のオジキが山健のカシラやった頃かな。山健の代取る前の話や。ワシが付いとったオヤジは健心の直参やったんやけど井上のオジキとは親しいしとって、ようメシとか食うとった訳や。ワシが運転して自分のオヤジ乗せて行って、親分らが会食の間はじ~っと外で待っとかなアカンわな。
本来なら・・・。
ところが向こうの若い衆が来よるんや。健竜のモンや。井上のオジキに付いとる健竜のモンが「オヤジがメシ食えいうてます」言うわけや。もちろんワシ、そら出来ません言うて断るがな。メシ食いに行ってるんちゃうからな。オヤジのお供で来てんのやから、オヤジの用事が終わるまで待っとくのがワシらの役目や。オヤジに呼ばれもせんのに勝手にノコンコ店に入っていってメシ食うなんか出来へん。ウチのオヤジが冷たいいう意味とちゃうで。普段は一緒にメシも食うし、長なる時は電話するからどっか行っとってもええぞとか言うてくれる。けどよその親分と会う時は基本外で待機や。
で、遠慮するワシに健竜の若いモンは、お宅の親分にも了解もろてますって言うから、しゃあなしにワシも店入って行ったんや。そしたら親分同士は別のテーブルについとったけど、ワシと健竜の若い衆には別のテーブルが用意されとって、両方の親分付き同士一緒にメシ食うようになってたんや。井上のオジキがそないしてくれてたんや。ワシのオヤジにも井上のオジキからちゃんと言うてくれてたんやな。
その時思ったんは、あ~井上の親分いう人は若い衆にも愛情持って気遣いの出来る立派な親分なんやなと。ワシいっぺんに井上のオジキのファンになってもうた。ワシら普段自分のオヤジに待っとけ言われたら何時間でも待っとかなアカンもんや。ところが井上のオジキと会う時はいつもこんな感じや。ワシみたいによその組のモンでも井上ファンはいっぱいおるやろな。
健竜の事務所に行く時も一味違うで。あそこは狭い路地みたいな所に事務所があるんやけど、ちょっと離れたところに車を停めて待機せなあかん。そしたら健竜の部屋住みが来てコーヒーとオシボリを小さいお盆の上に載せて「ご苦労様です」言うて気遣いしてくれるんや。
まぁそんな事もあって、ある日健竜会で葬式があってワシ組とは別に個人名でちょっと出した訳や。そしたら後日、井上のオジキから直筆の礼状いうんか手紙が来た。当時の健竜会いうたら、天下の健竜会やで。プラチナ以上や。ど~んと構えて威張っててもええくらいのモンやで。せやけど井上の親分いう人は全然そんな所がない。
だから今回みたいに山口組が割れたいうんか、井上の親分が本家から脱退したんやけど、そのあと三次団体がいっぱい井上側に流れてる。普通脱退した側に人間が流れるんやのうて、下部組織は本家側に戻ろうとするもんや。これはもう井上の親分の人徳や。
もともとヤクザいうのはそうやないとアカン。どっちに付いたら得かな損かなって、そういうもんと違うはずやろ。この人に付いていきたい。物騒な事でもこの人のためやったら。いうんが長い懲役にも耐えられるんちゃう?
今あれこれ批判されてる親分連中なんかにも会うた事あるけど、こっちが「ご苦労様です」言うて挨拶しても知らん顔してるけど、井上のオジキは顔覚えとって「おぉご苦労さん」とか笑顔で返してくれるんや。ワシ健竜いきたいな~って思てたもん(笑)