六代目山口組 若頭補佐昇格の論功行賞

先日人事発表があり、新たに若頭補佐として三名の執行部入りが正式決定した。

安東美樹(二代目竹中組組長)、津田力(四代目倉本組組長)、野村孝(三代目一会会長)以上の三名が新たに執行部入りした。分裂後に人員が減ったうえに森尾卯太男(大同会々長)が本部長に就くなど若頭補佐の人員が減っていたので、ここへきてある程度の体制を固めておきたいという感じがする。

安東組長は今の山口組の中では直参として他の枝の者からも人望があって、以前からも執行部入りの噂があり、きわめて順当な人事と言えそうだ。では津田力(倉本組組長)についてはどうだろうか。こちらも補佐への昇格が昨年から言われていたが、昨年9月5日に新神戸駅であった例の「サインください」の騒動について、当日警備にあたっていた津田組長の責任が問題になったのではないかと噂があった。しかし偶発的に起こった騒動であり大きな問題になることも無く、騒動について誰かが責任を取らされたという話しも聞かない。

それよりももっと大きな出来事があった。新神戸駅の騒動から1ヵ月後の10月9日、和歌山で起こった四代目山健組傘下の五代目紀州連合会会長撲殺事件だ。これを評価するのかどうか今回の人事にはっきり現れているように感じる。本家として神戸山口組との衝突は、使用者責任の問題もあって、表立ってけしかけることは出来ない。しかしやってはいけないことに関しての罰則は今の山口組でも従来どおりに適用されている。

起こしてはいけない騒動や揉め事については謹慎になる事もあり、その程度によっては除籍や破門もありえる。だからこの和歌山の事件について本家で不祥事と考えているならば、今回の津田組長の昇格は無かったはずで、一定の評価があるからこそ昇格もあったのではないだろうか。

このご時世、三代目の頃のように組全体を上げて配下を扇動するような抗争は起こせない。しかしやるべき事を自分の責任と判断で遂行し、上部団体を巻き込む事無く完結できるなら、それは静かに評価していくという事なのかもしれない。

今回の昇格人事は、本家から傘下団体へ向けて事前に対立について指示を出すことはないが、評価すべきは今後もしっかりと評価していくというメッセージは汲み取れる。

六代目山口組と神戸山口組の対立関係は今後も続くだろう。しかし過去の抗争のように派手な事件は避けつつ、矛盾やジレンマを抱えながら大きな音をたてずに静かに展開していくと思う。