鎮魂 さらば、愛しの山口組

平成25年(2013年)、著者は元六代目山口組直系の盛力会々長の盛力健児。宝島社より出版された。

大阪戦争時に起こったベラミ事件(三代目山口組々長銃撃事件)の報復を指揮したとして、16年服役した大阪戦争の功労者として知られる盛力健児が、山口組を除籍された後に出版した。盛力の執筆ではなくインタビューを通しての盛力の発言をまとめて書籍化している。いわゆる暴露本。多くの山口組に関する本は過去についてのものが多いが、この本は現在の山口組に至る過程の内情が書かれており、元直参が名前を公表し出版したと言うことでも衝撃的だ。五代目、六代目の時代を直参として過ごした盛力の目から見た組織内について細かく書かれているが、注釈もついて一般の人にも分りやすく工夫されている。あくまでも本人の目から見た山口組という事である。功労者でありながら窓際に追いやられた盛力の不満は理解できるが、なぜ盛力ほどの功労者を窓際に追いやらなければならなかったのか、執行部の考えも知りたいと思う。

現実問題として、長期刑から社会復帰した功労者であっても、様変わりした近代ヤクザの現実に付いていけず回りから浮いてしまう事もある。盛力氏がそうだったかどうかは分らない。しかしシノギもそれなりにしていた事から、十分ヤクザ社会に順応出来ていたと思う。いわゆる懲役ボケはなかったと思う。ワタナベ、ツカサと呼び捨てに下に見ているが、自分が盃を受けた親分であるから言い過ぎに感じるが、本人が最後に受けた処分の事を考えると、怒りが爆発するのも仕方ないかと思う。盛力氏のように今の執行部に不満を持っている現役の直参組長も多くいると想像がつく。

自分が印象に残ったのは、元総本部長・岸本才三の「盛力、それ以上言うな」「お前の言いたい事は分かってる」など短い言葉にある、岸本とて現在の山口組に、大きな不満を抱いていたのではないかと、思えてならない。あまり知る事が出来ない直参組長の本音を明け透けに書いたこの本は、ぜひ読んでいただきたいと思う。