西麻布事件(小林会幹部射殺事件)

事件

平成19年(2007年)2月5日
東京港区西麻布の路上で住吉会住吉一家小林会小林忠紘会長の秘書役、
直井組の組長代行・杉浦良一が射殺された。

事件の背景

当時の小林会は、東京に出先を持つ複数の山口組系組織とトラブルを抱えていた。殺された杉浦良一は事件前日にも、麻布にある太田会系の事務所へ出向き話し合いの場が持たれている。この事から当初小林会は太田会の手による犯行と見て、即座に太田会系の麻布事務所へと反撃を行った。

つまりこの事件は、住吉会のシマ内での山口組系事務所の開設を巡るトラブルという見方があった。しかし事件はかなり複雑だったようだ。

国粋会が山口組への加入後、これまで住吉会系に貸していた貸しジマについて、地代の値上げ、あるいは返還など貸しジマについて組織同士の何らかの交渉事があった。この内容について最も反発していた者の一人が射殺された杉浦良一だったとも言われている。

交渉については国粋会が貸しジマについて住吉会側と交渉段階にあったようだが、実際にはまだ結論は出ていなかった。そこのところは東京の組織同士、流儀に則り調整中といった状態が続いていた。
そこへ国粋会と同じ山口組系組織が、入り込んできた事で話は余計にややこしくなって来たのではないだろうか。
太田会系にしてみれば、国粋会の主張に同調するのは都合がいいし、国粋会の縄張りなら、それは自分達と同じ山口組系だから自分達が出張っても何の問題もないと。ところがこれは関西流の考えで、しかも国粋会と住吉会の間でも結論は出ていなかった。
なお、西麻布の事件について太田会は関与を否定している。

経過

西麻布の射殺事件直後、相手がどこの組織であるか正確に判明していなかったが、この事件から約一時間後には、麻布十番のマンションの一室にある山口組系太田会の関係事務所に銃弾が撃ち込まれた。

翌日の6日には、午前6時に渋谷区道玄坂で、午前8時には豊島区高田でそれぞれ拳銃が撃ち込まれている。渋谷区は前年まで国粋会系が事務所に使っていた空き部屋で、豊島区は山口組系の人物が出入りしていたという。

これに関連し後日、住吉会系小林会幹部・沼能英雄、上野浩二ら9人が逮捕されている。

事件後

山口組と住吉会は事件後、7日に話し合いの場を持ったが、この日に話はつかなかった。これを決裂と見るか不調と見るか意見は分かれるが、翌日の8日になって抗争を拡大しないと言う事で合意した。しかしこの時貸しジマの問題は、棚上げにされたという。

そして1週間後、事件について何らかのケジメなのか国粋会の工藤和義会長は、2月15日に自宅で拳銃で頭を撃ちぬき自殺した。

平成21年(2009年)4月9日
住吉会系の元組長・伊藤龍美、同組員・橘内登ら4人を、平成19年2月に麻布十番のマンションで拳銃数発を発射し、玄関ドアを壊したとして銃刀法違反で逮捕。

事件から3年近く経つ平成21年(2009年)12月になって、山口組系国粋会の宮下貴行と岩佐茂雄が、杉浦良一幹部の射殺犯として逮捕されている。

平成23年(2011年3月)
2審の東京高裁は、検察と弁護側の控訴を両方棄却し、それぞれに無期懲役と30年の有罪判決を下した1審の判決を支持した。