悲しきヒットマン

昭和63年(1988年)、元山口組の顧問弁護士であった山之内幸夫の原作で、徳間書店から出版された同名小説を翌昭和64年(1989年)に東映で映画化した作品。

主人公の高木昇を演じるのは三浦友和。近年公開されたアウトレイジでのヤクザ役は評判が悪いようだが、当時はなかなかの物だと思う。いったんは中井貴一に決まっていたのだが、中井側が降りた事で三浦友和になったといういきさつがある。中井はその後「激動の1750日」や「極道戦争武闘派」などに出演した。

主演の三浦友和の評価はともかくとして、内容については原作からかなりデフォルメされており、成田三樹夫演じる山川が高木の最初の兄貴分で、その後航空機内で手榴弾を爆発させているが、原作ではそれぞれ別人物だ。この点は映画という決まった時間内で完結させるための工夫の範囲内だと思うし、成田三樹夫の演技も秀逸で原作からの違和感も薄い。ロシアンルーレットの場面など事実に基づいた原作にはないシーンに若干冷める部分もあるが、ヤクザ映画としては近ごろのVシネマよりも数段クオリティが上だと思う。こういう映画の常として、当然山口組という固有名詞は使われていないが、原作と合わせ読むことで場面ごとの意味も理解できると思う。