弘道会から直参を上げない理由

現在の三代目弘道会は竹内照明を会長とし、本家の当代を出した組織として山口組内では本流の最大組織とされている。

そしてこの弘道会からは、ほとんど直参に昇格させていない。近年では 高山誠賢が淡海一家として六代目の直参に昇格したくらいだろうか。過去には一時期、菱心会が直参に直っていたが、今では弘道会に再吸収されている。

人材不足という事はない。三代目弘道会の執行部や舎弟クラスには、直参に上がっても十分にやっていける組織がゴロゴロある。初代司忍の時代から幹部クラスにいた人材が、今の三代目弘道会で竹内照明会長の舎弟に連なっている。
これらの舎弟らが初代弘道会で執行部にいた頃、現会長の竹内照明は枝の若衆である。自分達よりずっと格下だったはずの者が弘道会の当代となり、その者の盃を飲んだ。当事者同士の中には不満はあったかもしれない。しかし初代から三代目までスムーズに代替りしていったかのように外からは見える。

スムーズに代替り出来た理由の一つに、先代が存命中に代替り出来た事が大きいと思う。つまり先代がはっきり指名した以上、それは揺るぎないものになる。
それが不満なら引退するか、組を去る以外ない。とはいえ自由に組を出られるほど弘道会は甘くない。堅気になるしかない。

代替りのタイミングで古参を直参に上げる事は良くある事だが、弘道会ではこれもせずに自組織の系列はそのまま温存した。このことで弘道会の流派は分散せず、一本化したまま現在も最大組織であり続けている。

この事で現在の当代を出した弘道会に籍を置く者は、同じ山口組同士でバッティングしても、遠慮せずに事を進める事が出来る。いつの時代も当代を出した組織は山口組内では強い力を持つ。結局は弘道会としてまとまっている方がメリットが多いという事である。こういう事をドライに考えていくと、直参に昇格させる方も、する方もデメリットの方が大きい。そう考えると将来性ある竹内を当代に据え、古参として弘道会にいる方が遥かに名前が通るし、シノギもしやすい。

この点で山健組と弘道会は大きく違いが出た。山健組の失敗を弘道会は十分に吟味してきたのではないだろうか。もちろん山健組とは事情が大きく違うものの、山健組が往時の勢いを無くしたことは誰の目にも明らかだろう。

弘道会が今の方式やラインを崩さない限り、他の系列に山口組内での勢力を取って代わられる事はないように思う。もちろん誰が七代目に大手をかけるかによる。

現在では山口組上げての他団体との抗争はないに等しく、内部抗争厳禁の山口組内で他系列との冷戦を勝ち進めるかという大きなテーマがある。その冷戦に最も有効なのが、当代を背景にした大勢力という大きな圧力ではないだろうか。