ヤクザ関係の書籍ではありませんが、日本警察の中枢とはどういう所なのか、人間関係や表からは見えない腐敗体質など興味深い内容を知る事が出来ます。
1995年3月、地下鉄サリン事件の直後に起こった国松孝次警察庁長官狙撃事件。
事件捜査を主導する公安部がオウム犯行説に固執するなか、刑事部では中村泰という老練な謎多きスナイパーから重要な情報を得た。刑事部はこの第一級容疑者である中村から詳細な自供と真犯人しか知りえない秘密の暴露を受けながらも、国民には理解しがたい稚拙な警察内部の事情から遂に時効を迎える事になった。
警察内部の部署同士の対立や派閥、上下関係やメンツ。初期の見込みや初動捜査から方向転換出来ない公安が事実関係を無視しオウム犯行説へ賭けた捜査は、ギャンブルどころか公安のメンツや責任問題を避けるための暴走以外の何ものでもないだろう。
日本の警察史上類を見ない長官の命が狙われた事件。歴史上も重要な事件でありながら部署同士の対立という人事や人間関係の果てに未解決となった事件の深層を知る事が出来る良書である。
