何をおいても基本は盃
まずヤクザの組織構成は、家族構成になぞらえて説明される事があるかと思います。つまり組長はお父さんで、若中は子供という感じです。若中については若衆・若いモン・子分という表現もありますが同じ意味で、「若中」という表現は名刺などに書くあらたまった表現です。
図で説明します。
「A組」というのがあります。A組には組長のAから親子盃を下ろされた若中が6人います。B~Gの6人にとってA組長は親分です。「明日はオヤジについて、神戸まで行かなあかん」などと言います。
またB~Gの6人はAから盃を受けた(組に入った)順番により先輩後輩はありますが、「兄弟」となります。他団体の者と特別に盃を交わして「兄弟分」となる事もありますが、それはまた意味が別で、ここでは同じ親分を持つ者同士として単に「兄弟」と言います。「キョーダイ、ちょっと飲みに行かへんかぁ?」と言った感じです。また兄弟同士でもキャリアに大きく差がある場合、アニキと呼ぶケースもあります。「今日はBのアニキえらい機嫌が悪いなぁ」という感じです。
そしてA組長の弟分は舎弟と呼ばれ、舎弟盃を下ろされています。
下の図のようになります。
黄色の線が舎弟盃です。A組長の舎弟、HとIは弟分なのでA組長の事は親分と呼ばずアニキと呼びます。一般家庭でお父さんの弟と言えばオジサンになりますが、組内ではB~Gから見て親分の舎弟H・Iはオジキかアニキと呼ばれます。組によって、あるいは当人のキャリアや貫禄による距離感から呼び方は変わります。
またA組には顧問や相談役と言った役職があるケースがあります。
図で見てみましょう。
顧問と言っても学校の部活の顧問とは違い、A組のトップはあくまでもA組長です。
黄色い線で表したように一般には舎弟盃になりますが、盃なしの顧問という位置づけもあります。基本的にA組の主役、中心となり活発に活動をするのはB~Gの若中です。それに比べると顧問、相談役というのはA親分との個人的な関係性で繋がり、言ってみれば中二階的な役職です。隠居に近く普段わりと自由な身分でもあります。
以上が組単体における盃関係です。顧問や相談役は組によっては置いていない組織もありますし、舎弟と若中の人員数の比率は組によって様々です。また発言権や行動力は個人によりますので、明文化されたルールはありません。うるさ型の相談役もいますし、イケイケの組織を率いる顧問もいます。
ようするにA組という組織構成は、A組長を頂点に舎弟や若中といった何らかの盃関係を持ち、組(一家)と言う三角形が出来上がります。そしてこの組単体が山口組と言う巨大ピラミッドの一コマに組み込まれる訳です。
また組長の妻や先輩格に当たる人物の妻は、「ネェーサン」と呼び、愛人なども地名を入れて「島之内のネェーサン」などと呼ばれます。
盃関係があると言うことは正式なヤクザとして、本人の所属を明確にし、どこの系列下にあるか、または誰の支配下にあるか重要な意味を持つ。盃のあるなしが堅気とヤクザの境目となる。そしてその所属する組内における本人の役もまた重要な意味を持つ。