ヤクザと税金

拘留中の五代目工藤會の野村悟総裁が所得税法違反で再逮捕されている。
警察は「上納金」という言葉を使っているが、ようは定期的に本部に集められているお金がトップの所得に当たり、これが納税申告されていないという脱税容疑である。

ヤクザで上に立つ者は特にこの「上納金」という言葉を嫌う傾向がある。山口組系の組ではたいてい「会費」と呼ばれて一次団体、二次団体、三次団体それぞれが所属する組織において通常月に一回集められる事になる。当然一次団体に当たる山口組の本部でも、直系組長は直参として神戸の本部に対しこれを納めている。ところでこの集まった会費は司組長の所得になるのだろうか。
これはならないようである。
神戸の本部に集まった毎月の会費は六代目山口組の運営費に当てられている。過去にはこの会費の不明瞭な使途について、会計に関わるある直参の使い込みが噂になった事もある。それはともかく直参組長が本部に持参する会費は直参組長個人の甲斐性で賄われる事もあれば、二次団体(直系組織)に集まった会費から捻出される事もあり、それぞれの直系組織によってバラバラである。

さて今回のように警察が脱税でヤクザを追い込むケースは、けっこう過去にもあった。暗殺された四代目山口組の組長だった竹中正久は、内妻が経営する金融業の所得を税務申告しなかったという事で、有罪判決が出ており殺された時点では収監が決まっていた。
収益に目をつけて脱税から摘発するという手法については、アメリカでは古くからありシカゴの暗黒街を牛耳っていたアル・カポネを長期刑へ葬ったのも脱税事件である。

このようにアウトローに対して当局が、所得と納税に目をつけて摘発するという事は、歴史的に見ても何度も行われてきた事だが、組の会費をそのままトップの収益とみなす事は今回が初めての事である。この流れが定着する事になれば、組織においても今後ますます難しい状況になって来るだろう。何かと拡大解釈の風潮にある昨今、この摘発が下部団体へと波及していく事も十分考えられる。
もちろん所得に対する税金については、国民の三大義務の一つでもあるので異論はないだろうが、会費として皆で出し合う金銭についてはどう解釈していくのかが微妙な争点である。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150617-00000047-mai-soci